『古代への情熱』
ジェイ教育セミナー広畑校 有働
「トロイの木馬」のお話を皆さんはご存じでしょうか。トロイ(トロイア、イリオスとも)ははるか昔の城塞都市で、現在のトルコ領内に位置します。このトロイの発掘に大きな功績を残した19世紀の人物に、ハインリヒ・シュリーマンという人がいます。幼いころからトロイの伝説に強い関心をもっていた彼は、貧しい商人から身を立てて、手にした富の多くをトロイの発掘につぎ込みました。
シュリーマンの自伝『古代への情熱』は、多少誇張した表現もあるようですが、読む分にはすこぶる楽しいものです。特に例文暗記と暗唱に主軸を置いた外国語の勉強法については、語学に堪能な他の19世紀人とも共通する部分があり、語学学習のスタンダードの一つなのではないかと思います。その一節、シュリーマンがロシア語をマスターした時のエピソード。シュリーマンは、ロシア語を全く理解しない他人を雇い、自分がロシア語を勉強している様子をずっと監視させたそうです。なぜわざわざそんなことをしたのか、皆さん、お分かりですよね。監視なしでは気が散ってしまう人間の弱点を、シュリーマンはよく理解していたというわけです。
さて、ジェイでも対面授業に戻りますが、Web授業も並行して開講しています。Webは今後も活用していき、5月に行ったようなWebを用いた補習システムも、6月以降、あるいは夏期講習などで継続して実施していく予定ですので、授業でわからないところなどは対面やWeb、様々な場面で積極的に質問してください。自分は今、何がどう分からないかを整理していくことも勉強のひとつです。しっかり自分と向き合っていきましょう。
『古代への情熱』(岩波書店)
シュリーマン著