私が小学校の校長先生だったら生徒さんにお伝えしたいこと





ジェイ教育セミナー理系授業担当 中野

新学期の対面授業が始まり、みなさんの新学期の学校生活がスタートしました。始業式や朝礼などもあったと思います。
私が小学校高学年だった頃でした(もう何十年も以前のことですが)。
始業式で校長先生がこんな話をしてくれました。今でも鮮明に覚えています。校長先生の実体験なのか、スピーチの本にある例文なのかわかりませんが、それはどちらでもかまいません。大切なのは話の内容です。


「6年生が、新しく入学した1年生の教室の掃除を手伝っていたとき、突然ある6年生の男の子が1年生の女の子にめがけて、バケツに入った水をすべてかけました。女の子が泣き出したこともあって、6年生の担任の先生がやってきて、みんながいる中で6年生の男の子に『なぜ、あんなことをしたの』と尋ねたのですが、その男の子は口を真一文字に結んだまま返答しませんでした。翌日、その女の子の母親が学校にやってきて、その男の子に『ありがとう』と言葉をかけました。そして担任の先生も、男の子に直接声をかけて『君のやさしさがわかったよ』と言ってほめてあげました」


私はこの話を思い出すたびに、目頭が熱くなります。「6年生の男の子がなぜ、バケツの水をかけたのか」、この理由はそのときはわかりませんでしたが、中学生になって、小学校時代の友人と話す機会があり、その中でやっと理解できました。
(保護者の方もお子さんと一緒に、なぜ男の子がこのような行動をしたのか考えてみてください)

私がお伝えしたいのは、この6年生の機転の利く、とっさの行動もそうですが、担任の先生の質問に口を一の字にして返答しなかったときの心の動きを思うと、目頭が熱くなるのです。弱い相手をかばう心、我慢して自分の行動の理由をみんながいる前ではけっして言わなかった強い意志……。

私は日々、生徒さんと接する中で、直接道徳的なことの指導はしません。それぞれ「物事の考え方」や「保護者の方の指導方針」がありますから、あえて口にしないようにしています。ただ、人としての根底にあるやさしさは、言葉には出さなくても背中で示しているつもりです。今後とも体と頭が動く限り教壇に立って指導したいと思います。