101年目のヴァイマル憲法
ジェイ教育セミナー安室校 宮越
101年前の1919年7月31日は小都市ヴァイマルでドイツ共和国憲法が国民議会の承認を受けた日です。
中学校の教科書(帝国書院「中学生の歴史」、東京書籍「新編新しい社会公民」)には「ワイマール憲法」と表記されています。人間に値する生存の保障などの「社会権」を取り入れた最初の憲法として有名です。
そもそも「社会権」とは何でしょうか。かつてヨーロッパでは、国王や皇帝が思うままに政治を行っていた時代がありました。ところが日本の江戸時代にあたる17~19世紀ごろ、大きな変化がおこりました。身分制度が廃止され、自由で平等な「市民」がつくる「市民社会」に変わり始めたのです。
1776年に出された「アメリカ独立宣言」や、1789年に出された「フランス人権宣言」の中で、「すべての人間は平等で、自由に生きる権利を有する」という「自由権」がうたわれるようになりました。
それから産業革命がおこり、工業が発達して資本主義社会が生まれました。工場や機械を持つ資本家が、労働者を雇って生産活動をするようになり、もともとあった貧富の差が、さらに拡大しました。そのような社会で、失業や貧困が個人の責任ではなく、経済制度そのものに原因があるととらえ、経済的弱者の救済が社会の責任と認められるようになり、国家が積極的に介入し、「人間らしい生活を保障する」ために生まれたのが「社会権」です。
この「社会権」の思想を最初に盛り込んだのが、第一次世界大戦後のドイツで制定された「ヴァイマル憲法」で、現代憲法の先駆けとなりました。
日本国憲法にも社会権の規定があり、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を保障する「生存権」のほか、「勤労の権利」、「教育を受ける権利」、労働者の権利を守るための「労働基本権(団結権・団体交渉権・団体行動権)」が定められています。
現在の私たちが当たり前のように享受しているこのような権利は、当時の人々が厳しい戦いの中でようやく勝ち取ったものです。日本国憲法第12条には、「国民はこの権利を不断の努力によって保持し、決して濫用せず、公共の福祉(みんなの利益)のために利用しなければならない」と明記されています。自分のことだけを考えず、みんなに意識を向ける優しい社会を今後も作っていきたいものです。