山田孝雄生誕145年


ジェイ教育セミナー相生校 竹井

国語に関する質問です。
以下の3つの文の違いは、何でしょうか。

 ① ああ、美しい月だな。
 ② 月は、美しい。
 ③ 月は、美しいですか。  

上記3つの文には、根本的な違いはなく、語法の差、助詞(~な、~か、など)の差のみでしかないと考え、これらの文をひとまとめに(「述体」として)くくった人がいます。また、文の種類を分類する際に、西欧の文典を参考にして、英文法の文の4分類(叙述文・疑問文・命令文・詠嘆文としている)に基づき、4分類にしている戦前の日本の文法家たちを「形式的な区別でしかない」と批判しています。そもそも、国文法には、(.(ピリオド)・?・!)といった3つの符号もないことから、独自の分類法を提示しています。   

その人が、山田孝雄(やまだよしお)(1875~1958)という人です。おそらく、ほとんどの方は、「知らない」と思います。8月20日で生誕145年。富山県生まれの、国語学者・国文学者。日本の国文法の基礎を作ったと言っても過言ではない人です。また、「独学の人」としても知られ、教員試験も独自で勉強し免許を取得したとのことですよ。 

こうした逸話があります。 
兵庫県立篠山鳳鳴高等学校(現存し、ジェイ農園がある隣町にあります。)で国語の先生をしている時に、生徒からこう質問されたそうです。
「主語につく『は』が、主格(主語であることを示す格)でない場合にも使われている」
と。それまで山田は助詞「は」は主語に付く語だと生徒に教えていました。ところがある生徒から、『は』が主語以外に付くケースがあると指摘され、山田は愕然としました。このことが原動力となりそれ以来、国文法研究に邁進するようになったとのこと。
後年、彼の提唱した文法理論は「山田文法」と呼ばれるようになりました。  

中学生の皆さんが勉強する現在の国語教育の文法のベースになっているものは、「橋本文法」(橋本進吉によるもの)と呼ばれるものです。「橋本文法」と「山田文法」との大きな違いは、前者は「形式」を重視し、後者は「意味・内容」を重視している点。そのため、「山田文法」語では語の分け方も、「性質」や「運用・使い方」で分類。豊かな言語事実の分析を基に、しかも、理論的に整合性の高い文法体系を確立しています。  

日々皆さんが何気なく使っている日本語について、改めて考え直すきっかけの一つにしていただければ幸いです。