ティラノサウルスの体は羽毛に覆われていたか?
ジェイ教育セミナー相談役 福永
ティラノサウルスは6600~6800万年前に実在した最大体長13m、体重9tの大型肉食恐竜で「最強の恐竜」と言われています。
従来は、体表は地味な灰色のウロコというイメージでしたが、近年「羽毛で覆われていた」という説が出て、カラフルな羽毛に包まれたティラノサウルスが描かれた図鑑も出版されています。
このように定説が見直されることは自然科学では結構起こります。新たな発見がそのきっかけとなることが多く、恐竜の場合、1995年から中国で続々と見つかった「羽毛恐竜」の化石です。羽毛や毛など体表の痕跡が化石に残ることは普通ないのですが、特殊要因が積み重なって、細かな体表の様子が化石として残った地層が発見されました。現在約20種の「羽毛を持った恐竜」が発見されているのですが、そのうち2種がティラノサウルスの近縁種です。
体長1.6mのディロング(2004年)、体長9mのユウティラヌス(2012年)の2種で、このことから「ティラノサウルスも羽毛に覆われていた」と言われだしたのです。
ここで1つ注意が必要。鳥類の「羽毛」や哺乳類の「毛」は保温のためのもの=恒温動物(体温が一定)であることが前提となります。よって少なくともティラノサウルスのなかまは現在の爬虫類とは違って恒温動物であったことは確かなようです。
最後に「ティラノサウルスの体は羽毛に覆われていたか?」については「わからない」が現状です。
ただ、有力な説は次の通りです。
①成体のティラノサウルスは羽毛をもっていない。またはもっていたとしても体のごく一部。
②幼体のティラノサウルスは羽毛に覆われていた可能性もある。
根拠は体の大きさと環境条件です。
体が大きいと体積の割に表面積が小さくなり、熱の放射が妨げられます。ティラノサウルスの生息域は温暖であったので、「羽毛で覆われると『熱中症』になってしまう」、というのが根拠です。では大型のユウティラヌスの場合は?
実はユウティラヌスは生息域が寒冷地であることがわかり、大型でも保温のため羽毛が必要だったと考えられています。
「ティラノサウルスの羽毛」の最終結論は今後の研究に委ねられていますが、新たな発見に対して「仮説を立てる→検証する→結果を考察する」をくり返すこと。これが自然科学の面白みといえるでしょう。