天然痘根絶までの歴史


 ジェイ教育セミナー新飾磨校 松下行雄

9月になりましたが、まだまだ新型コロナウイルスは収束の気配はありません。ワクチンの開発が完了し、ワクチン接種となれば安心できるのですが、ニュースなどを見ているともう少し時間がかかるようです。

さて、今までにも世界的に大流行した疫病はいくつかあります。その中で「天然痘」や「種痘」というものを知っている人は少なくなったのではないでしょうか。

かつて天然痘は新型コロナウイルスと同じように世界的に大流行したことが何度かありました。古くは紀元前1000年ごろ、天然痘で死亡したという記録があるそうです。日本では、奈良時代に大流行し、奈良の大仏ができたのは、天然痘の治癒祈願もあるそうです。また、戦国武将の伊達政宗が幼いころにかかり、命はとりとめたものの、右目を失明したので、「独眼竜」と呼ばれる武将となりました。

そこから根絶宣言が出されたのは1980年。3000年ほどの間、人類はこの感染症と戦ってきたことになります。天然痘は飛沫・接触感染で1週間から2週間の潜伏期間を経て発症し、40℃前後の高熱のほか皮膚には発疹が出て、治っても「あばた」が残るそうです。体の表面だけでなく、呼吸器や消化器などの内臓疾患もあり、致死率20~50%で、人に対して高い感染力を持ちます。

実は天然痘は根絶できた唯一の感染症と言われています。

天然痘ワクチン接種を広めるきっかけとなった人物がエドワード・ジェンナーという人です。牛の乳搾りをする人から「牛痘にかかった人は天然痘にかからない」という話を聞き、1796年に天然痘に似た牛の病気である牛痘(天然痘より死亡率が低い)の膿を8歳の少年に接種してみました。するとその子は天然痘を発症しませんでした(ジェンナーが我が子に接種したという逸話が残っていますが、実は使用人の子に接種したのが本当のようです)。このことがきっかけとなり、ワクチンの研究が進みました。ただ、このワクチン接種は、はじめはなかなか受け入れられず、広まりませんでした。しかし天然痘の大流行を機に世間にも普及していき、その後、さらにワクチンは改良され世界に広まり、天然痘は根絶宣言が出されたというわけです。

新型コロナウイルスも一日でも早く、ワクチンが開発されるのを願うばかりです。そして、ワクチンができても、天然痘やインフルエンザのように長く付き合っていかないといけない感染症なのかもしれません。

私たちができることとして感染しない、させないように工夫して、予防していくことですね。もうしばらく頑張っていきましょう。