コロンブスの時代・歴史のうねり


 ジェイ教育セミナー大手前校 中森


1492年10月12日、クリストファー・コロンブスはバハマ諸島サン・サルバドル島(グアナハニ島)に到達したと伝えられています。いわゆる「アメリカ大陸到達」です。



歴史に大きな一歩を刻んだコロンブスですが、その航海を準備したのは、ヨーロッパにおける文化・学問の深まりと、それにともなう大きな意識の変化でした。

少しばかりヨーロッパの歴史を振り返ってみましょう。ヨーロッパの文化・学問の原点は古代ギリシアとローマです。

古代ギリシアとローマを源とするヨーロッパ文化ですが、さまざまな要因が重なり、中世にかけて長く停滞期を迎えます。しかし、古代の学問は、イスラム世界に伝わり、保存され、発展を遂げていました。

それらの文化・学問は、12世紀ごろからイスラム文化圏からヨーロッパに「逆輸入」されてきます。その中には、地球を球体と考えるプトレマイオス地理学もありました。こうして再発見された文化・学問はヨーロッパで大きな広がりをみせます。

(ちなみに、「コロンブスの時代のヨーロッパでは地球がお盆のような平面だと考えられていた」というのは後世に大げさに語られた俗説で、地球球体説はそのころ既にかなり知られていたそうです)


時代は進んで15世紀末、コロンブスの時代のスペインです。

実はスペインは長らくイスラム勢力によって支配されていたのですが、1492年、当時のスペイン王、すなわちフェルナンド王とイサベル女王はついにイスラム勢力をスペイン本土から一掃します。

国内の平定を終えた女王イザベルは、海外に目を向けます。

そのとき名乗りを上げたのが、地球球体説を信じ、壮大な航海計画を立てたコロンブスです。女王イザベラの信任を受けたコロンブスは、大西洋に漕ぎ出します。

(このときのコロンブス、本当はインドを目指していました。コロンブスはアメリカをインドだと勘違いしたまま生涯を終えたという事実は有名です)


コロンブスのアメリカ到達、このときからヨーロッパの世界進出が始まります。ヨーロッパの飛躍的な経済発展と、それを可能にした征服活動と植民地支配……。ヨーロッパ史の光と闇は、ここから始まったのです。


こぼれ話ですが、大航海時代を準備した文化・学問の深まりは、同時期のルネサンス(古代ギリシャ・ローマの健康的な人間性を取り戻そう!という運動)のきっかけにもなり、また、のちの啓蒙思想、すなわち近現代の社会思想・人権思想の基盤を作り上げるきっかけにもなりました。

歴史って、本当に面白いですね。大きくうねるような時代の流れを楽しむことが歴史の醍醐味だ、と私はそう思います。