面白い着眼点
ジェイ教育セミナー本部事務局 北野
私が中学生の頃(約15年前)にも国語の教科書に『走れメロス』が扱われていました。
邪智暴虐の王の暗殺を企てて王城に侵入し、衛兵に捕らえられたメロスは、妹の結婚式に出席するために、親友のセリヌンティウスを身代わりにして3日間の猶予をもらい、そして親友との約束を果たすために死力を尽くして走り続け、約束の3日後の日没の寸前に王城に戻ってくる…簡単にまとめるとこのような話です。「自分の命が無くなることを分かっていても、友達の為に走れるだろうか。」などと考えたりしたのを覚えています。
大人になったある日、ネットのニュースで“メロスの全力を検証”という記事があり中身を見ると、「メロスは作中、自分の身代わりとなった友人を救うため、王から言い渡された3日間の猶予のうち初日と最終日を使って10里(約39キロ)の道を往復します。研究ではこの道のりにかかった時間を文章から推測。例えば往路の出発は「初夏、満天の星」とあるので0時と仮定、到着は「日は既に高く昇って」「村人たちは野に出て仕事を始めていた」とあるので午前10時と仮定して…距離を時間で割った平均速度はずばり時速3.9キロ!メロスは復路の日、「薄明のころ」目覚めて「悠々と身支度」をして出発し、日没ギリギリにゴールである刑場に突入します。北緯38度付近にあるイタリア南端の夏至の日の出がだいたい午前4時、日の入がだいたい午後7時と目星をつけ、考察を開始。復路では途中、激流の川渡りや山賊との戦いといったアクシデントがあり、これらのタイムロスも勘案してメロスの移動速度を算出した。その結果、野や森を進んだ往路前半は時速2.7キロ、山賊との戦い後、死力を振りしぼって走ったとされるラストスパートも時速5.3キロ…(ちなみに、フルマラソンの一般男性の平均時速は9キロだそうです。)。」
これを見たとき、なかなか面白い考察だなと感じました。ただ一番驚いたのは、これを考えたのが当時中学2年生の男の子だったということです。
教科書に載っているから…、大人が言っているから…、これが当たり前だから…と全て信じるのではなく、何気ないことにも疑問を持ったからこそ、こういったことに気が付くことが出来たのだと思います。大人が忘れてしまった思いもしない視点が、新たな発見や未来への扉を開くことに繋がっていく。そういった気持ちを皆さんも持ってくれればと思います。