おすすめの本『われはロボット』
ジェイ教育セミナー花北校 増田
今日は、教室でよく借りられている「ジェイ文庫」の一冊を紹介したいと思います。
『われはロボット』 アイザック・アシモフ著(早川書房)
幅広いジャンルで500冊以上の著作を残したと言われるアメリカの作家、アイザック・アシモフ。本書『われはロボット』で提示された「ロボット工学三原則」は、のちのSF作品に多大な影響を与えました。
ロボット工学三原則とは「ロボットは人間に危害を加えてはならない。ロボットは人間に与えられた命令に服従しなければならない。その2つに反しない限り、自己を守らねばならない」というものです。作品に登場するロボットには知能があるため、この原則を守ろうとしたときの優先順位や解釈から生じるジレンマにより不合理な行動を取ることがあり、その結果発生したサスペンスやミステリが物語を引っ張っていきます。
この物語を読んでいて我々の心に突き刺さるのは「人間を人間たらしめるものは何か」ということです。人造人間の自我の問題は、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』から始まり手塚治虫の漫画『鉄腕アトム』や映画『ブレードランナー』などの数多くの作品で繰り返し描かれてきました。生物的に人間として生まれた者だけが人間なのか、人工的に作られても心があれば人間と言えるのか。みなさんはどうだと思いますか?小説に限らず芸術の役割の一つは、答えることではなく問いかけることです。作品に触れた人それぞれが自分で考えることが大切なのです。
また、ロボットの創造主である人間がいずれ彼らに滅ぼされるのではないかという恐怖も描かれます。今後AIの知能が人間を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)を迎えた時、人類は実際にこの問題に直面するでしょう。こういった問題が提示されたこの『われはロボット』が出版されたのはなんと1950年、今から70年も前のことです。アシモフの先見の明には驚きを禁じ得ません。
連作短編としてまとめられたSFミステリである本作は、非常に読みやすく、小説の面白さに満ちた一冊です。ジェイ文庫の中にありますので、よければ手に取ってみてください。