負うた子に教えられて浅瀬を渡る
【 ジェイ教育セミナー手柄駅東校 久米田 】
「塾の講師」という仕事をしていると、生徒さんたちから自分の不出来を教えられ、不明を恥じ入ることが度々あります。
先日、うつらうつらと船を漕ぐ中学生男子に居眠りの理由を問いただしたところ、
「昨夜は深夜2時まで勉学に励んでいたのです。先生の授業が退屈なせいではありませんのでご心配なく」
と申します。わたしは、自分の授業の単調さの故ではないと知って胸をなでおろしつつ、年長者らしく、
「昨夜わたしが床についたのは朝の5時である。しかしこの通り頑張っている。君はわたしよりもずっと若いのだからしっかり起きなさい」
と偉そうに説諭いたしました。すると、
「先生。徹夜を自慢するのは中学生までですよ(ニッコリ)」
と返答され、わたしは激しく動揺しました。確かに彼の言う通りです。こんな深夜まで勉強してボクはなんてエラいのだろう!と己の生産効率の低さを棚に上げていたことに思い至り、猛省するしかありませんでした。
小学生の生徒さん相手でも油断はできません。国語の授業中、ある生徒さんに漢字の間違いをいくつか指摘したのですが、憤然とした彼女に、
「否定的なことばかり言わんといて!」
と強く叱責されたことがあります。わたしは棍棒で胸を突かれた思いでした。確かに彼女の言う通りです。
― すべての人間は、生まれながらにして平等であり、かつ尊厳と権利について平等である ―
『世界人権宣言』第1条をひくまでもなく、わたしがまず尊重すべきは彼女を肯定し、かつ正しい答えを導くにはどうすればよいかを共に考えることだったのではないか。そんなうろたえるわたしを救ってくれたのも、また生徒の言葉でした。
隣りに座っていた男子が「まちがえた方がわりーんだろ!」とすかさずフォローしてくれたのです。
わたしが不出来なのはもちろんですが、気づかないうちにみんな成長しているよなあ、としみじみ思う毎日です。