柳家小三治さん
【 ジェイ教育セミナー西飾磨校 淡井 】
一気に秋めいております。いかがお過ごしでしょうか。
さて、10月7日、落語家の柳家小三治さんが逝去されました。この方に関連して、私にとってある思い出があり、思わず筆をとる次第です。
何とか大学合格がかない、上京した春のことでした。学費、生活費を捻出するため、日本経済新聞のとある専売所に住み込みで働き始めました。もちろん希望を胸に、という自分もいました。しかし、深夜2時に起き、朝刊を配り、あわてて満員電車で大学に通う生活に疲れている自分もいました。大阪で新聞配達は慣れていたつもりでしたが、東京では受け持ちの部数も坂も多く、なかなか慣れることができないでいました。そんなおり、同じ店で働く先輩に声をかけられました。以下、なるべく忠実に再現します。
「淡井君、表情が暗いよ。」「すみません。」「いや、謝らなくても。まあ、慣れないよね。でも、つらい時に明るい顔をするのが粋(いき)ってもんだよ。せっかく東京にいるんだから、粋じゃないと。」「粋ですか?」
その先輩は、「粋じゃないと。」が口癖で、東京落語を愛する学生でした。そこで東京落語のCDを借りることになりました。先輩が特に敬愛する落語家は2人でした。古今亭志ん朝さんは、当時の自分には、あまりに明朗すぎました。一方、柳家小三治さんは、何というのか、しみじみと聞くことができたのです。氏の「文七元結」で泣き、「小言念仏」で笑うなどなど。粋を学べたか、身についたかはさておき、とにかく生活の張りができたことは確かでした。また、落語関連の本を探そうと大学図書館や大学周辺の古書街に通いました。それがきっかけで、単位を取れるか不安だった「ミクロ経済学」や「政治過程論」をともに学ぶ仲間もできました。
人との出会いがいかに大事かとあらためて思います。自分も、と書きかけ野暮なことは言わないことにします。
最後になりましたが、謹んで柳家小三治師匠のご冥福をお祈りします。