マーク・トウェイン『トム・ソーヤーの冒険』
【 ジェイ教育セミナー花北本校 増田 】
今日はジェイ文庫のうちの一冊である、マーク・トウェインの『トム・ソーヤーの冒険』というアメリカの小説を紹介します。
アメリカ文学の特徴は、なんといってもアメリカという国の歴史の浅さです。1776年に独立してからまだ250年も経っていません。そのため古くからの伝統にとらわれない新しい文学が次々と生まれました。さらに世界中から多くの移民が集まっているため、人種、言語、文化など様々なルーツが入り混じった社会から生まれる多様性も重要な要素です。
そんな中でマーク・トウェインは、のちに「アメリカ文学の父」と言われるようになるほど影響力と人気のある人物です。ノーベル賞作家ウィリアム・フォークナーは彼のことを「最初の真のアメリカ人作家であり、我々の全ては彼の相続人である」と評しています。「人種のサラダボウル」と呼ばれるほど様々な民族が混じりあった国の中で、アメリカ人であるという共通のアイデンティティが確立していく過程において重要な存在であるのでしょう。
方言を取り入れた飾り気のない直接的な文体は、アメリカ人が文章を書く方法を変えたと言われています。決して失われないユーモアと、奴隷制度などの社会の矛盾した点への批判精神も大きな特徴です。トウェインが前書きで「かつて少年少女だった成人たちにも読んでほしい」と述べているのが、自分が大人になった今はよく理解できます。
『トム・ソーヤーの冒険』の舞台は1840年ごろのアメリカ中西部の町です。主人公のトム・ソーヤーは、勉強嫌いでいたずらに情熱をかたむける10歳の少年です。ある日、彼は真夜中の墓地で殺人事件を目撃し、裁判の場で犯人のインジャン・ジョーを告発しますが、ジョーは逃走してしまします。その後、トムは観光用の洞窟で迷子になりますが、なんとそこでジョーと遭遇してしまい……という物語です。
トムは学校の先生に気に入られるような優等生ではありません。大人を常に困らせるし、ズルい面も臆病な面もあり、失敗も沢山します。ですが、豊かな想像力と勇気に裏付けられた行動力、そして優しさと正義感を心に宿した男の子でもあります。そんな人間臭いトムに、少年少女は自分を重ねて読み、大人は子どものころの純粋さを思い出しノスタルジーを感じるのでしょう。
ジェイの各校舎にハードカバーが置いてありますので、ぜひ手に取ってみてください。