キツネの話
【 ジェイ教育セミナー大津校 中森 】
早速ですがクイズです。
「キツネ」は英語で何と言うでしょう。
ご存じの方も多いと思います。
答えはもちろん “fox(フォックス)”。ちなみに雌ギツネは“vixen(ビクセン)”とも呼ぶそうです。
ではヨーロッパの他の言語では何と呼ぶのでしょうか。
ドイツ語は英語とよく似ていて、“Fuchs(フックス)”。
イタリア語の“volpe(ヴォルペ)”、ラテン語の“vulpes(ウルペース)”も互いに似ていますし、”f”と”v”の音も通じ合っているように感じます。
ではフランス語では?
答えは“renard(ルナー、ルナール)”。……どれとも似ていません。
もともとラテン語系統のフランス語なのに、意外ですね。
実はこの「ルナール」という呼び名、ある物語の主人公であるキツネの名前に由来しています。その物語のタイトルは、ズバリ『狐物語』。
『狐物語』は、12世紀後半から13世紀にかけて、様々な作者によって書かれた短編がまとめられ、成立しました。作者の多くは不明ですが、文字の読み書きができる知識人層であることから、教会の聖職者が多かったと推測されています。
悪知恵の働く主人公、キツネのルナールが、乱暴だけれどもやや間抜けなオオカミのイザングランを手玉に取る、丁々発止のやりとりがおもしろい作品です。この作品があまりに人気となったために、「キツネ」を表す単語自体が「ルナール」に変わってしまったというからびっくりです。
続いて、日本でキツネはどのようにとらえられているかも見てみましょう。
やはりルナールと同じように「ずるがしこい」というイメージなのが面白いですね。キツネに化かされるという昔話を聞いたことがあるという人も多いと思います。
また、稲荷神社では神の使いとしてまつられています。
2024年度の大河ドラマは紫式部が主人公とのことですが、紫式部の少し前の時代のスーパーヒーロー、陰陽師の安倍晴明には、母親がキツネだったという伝説が残っています。
稲荷のキツネ葛葉(くずのは)は、人間との間に子を産んだが、その子に姿を見破られて、泣く泣く夫と子の元を去ったというエピソードです。
最後に。
日本では人を化かすと言われているキツネですが、昔から伝わる、キツネに化かされないためのテクニックをお教えします。
それは、「眉につばをつける」です。
キツネは、人間を化かすためには人間の眉毛の本数を数えなければいけないそうです。人間は、眉毛の本数を数えられてしまわないように、眉をつばで湿らせてぺたりとくっつけたのです。
なんとも不思議な想像ですね。身近な言葉や面白い童話などから、昔の人の想像力や発想力に思いをめぐらせるのも楽しいものです。