「食」に関わる意外な名前の由来


 【 ジェイ教育セミナー大津校 中森 】


前回担当した記事では、フランス語でキツネを表す「ルナー、ルナール」の由来を紹介しました。

物語の主人公の名前から一般的な「キツネ」を表す語に変わった「ルナー、ルナール」に引き続き、今回は「食」をテーマに、意外な名前の由来をご紹介します。



まずは人名シリーズ。

・きんぴらごぼう

「きんぴら」とは、坂田金平(さかたのきんぴら)という人名から来ています。この金平とはだれかというと、「金太郎さん」こと坂田金時(きんとき)の息子です。源頼光と、坂田金時ら四天王と呼ばれる武人は、大江山の鬼退治の逸話で有名です。そして江戸時代、彼らの息子たちを主人公とするストーリーが、人形浄瑠璃の演目として流行しました。その力強さと人気にあやかり、ぴりりと辛みを効かせ、しっかりした歯ごたえのあの炒め物が、「きんぴら」と呼ばれるようになりました。


・助六寿司

稲荷ずしと巻きずしを合わせた「助六寿司(すけろくずし)」。これも由来は江戸時代、歌舞伎の「助六所縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」の主人公「助六」から来ています。この演目に登場する助六の恋人の名前が「揚巻(あげまき)」。「あげまき」の名前を、「あげ」に包んだ稲荷ずしと「まき」ずしにひっかけた、ダジャレだったのです。


ここからは地名、国名シリーズです。

・カステラ

カステラは戦国時代に西洋から日本に伝来したと伝えられています。このころ日本と交流があった国と聞いて思い浮かぶのはスペインやポルトガルですね。中世にスペインに存在した「カスティーリャ王国」、それにちなむ土地「カスティーリャ」から伝来したために「かすていら」と呼ばれるようになったそうです。さらにこの「カスティーリャ」をさかのぼると、カスティーリャ王国は多くの城塞「カスティーリョ(英語では「castle(キャッスル)」!)」を作ったために、それがそのまま王国の名になったということです。

ところでこのカステラ、昔はお湯に溶いて薬のように飲んだらしいです。食べ方もずいぶん変化したものですね。


・カボチャ

食卓におなじみの「カボチャ」も、元をたどれば戦国時代にポルトガル船が日本に伝えました。原産はアメリカ大陸ですが、ポルトガルのアジア拠点のひとつ「カンボジア」を経由して伝えられたため、「カンボジア」がなまって「カボチャ」となったそうです。

ちなみに日本語では「南京(なんきん)」「唐茄子(とうなす)」という呼び名もあります。落語の「唐茄子屋政談」を思い出す方もいらっしゃるかもしれませんね。


・ジャガイモ

次はオランダ船によって日本に持ち込まれた「ジャガイモ」です。さらに古い呼び名は「じゃがたらいも」。「じゃがたら」とは現代のインドネシアの首都「ジャカルタ」のことです。ここを拠点としていたオランダが持ち込んだことに由来しています。「カボチャ」とよく似た名づけの経緯ですね。どちらも現代では、もとが外国語だということすら意識されなくなっている、おなじみの食材です。

ちなみに日本語での別名は「馬鈴薯(ばれいしょ)」。ご存じでしたか。



以上、「食」に関わるいろいろな名前の由来をご紹介しました。

ただし、どの語源もさかのぼれば古い話。上記はあくまで一説であり、他の説があるものも少なくありません。また、他にも意外な名前が面白い由来を持っていることもあります。興味が出てきたら自分でもいろいろ調べてみましょう!