ルイス・キャロルの言葉遊び


 【 ジェイ教育セミナー龍野校 加古 】


「言葉の梯子(はしご)(word ladders)」をご存じでしょうか。

ダブレット(doublets)とか言葉のリンク(word links)とか呼ばれている言葉遊びです。2つの英単語が与えられ、片方の単語からアルファベットを1つずつ変えることで、もう1つの単語に行きつかせる単語の連鎖(れんさ)です。始めと終わりの単語には何らかの関係があるものが与えられます。例えばhateから loveへ単語をつなげていくとします。


HATE(大嫌い)→ HAVE(持っている)→ HOVE(heave:持ち上げるの過去・過去分詞)→ LOVE(愛する) 


いかがでしょうか。なかなかむずかしく、いろいろな言葉を知っておく必要があります。

このことば遊びを考えた人は、みなさんよくご存じの「不思議の国のアリス」を書いたルイス・キャロルという人です。彼は本名をチャールズ・ラトウィジ・ドジソンといい、イギリスの大学の数学の先生でした。1832年牧師の家に生まれ、オックスフォード大学のクライストイ・チャーチ学寮に入学しました。卒業後母校で数学と論理学を教え、1898年に亡くなりました。

彼は片耳が聞こえず、言葉もスムーズに出ないということから、内気で気難しいところがありましたが、幼い子どもと話すときは、そういうハンディキャップも消えてしまったというから不思議です。

1862年7月4日学寮長の3人の娘たちとテムズ川でボート遊びをしたとき、少女たちにお話をせがまれ、娘たちの1人であるアリスを主人公に、ほかの姉妹の名前であるロリーナ、イーディスも登場した話を思いつくまま夕方遅くまで話し続けました。別れぎわに、アリスから、この話を文章に書いてほしいとねだられました。そこでこの日の話を中心に、半年かけて自筆のさし絵を入れた手書き本にまとめてアリスに送りました。これが知り合いの目にとまり出版することになったのです。それが「不思議の国のアリス」で、今も世界中で読みつがれています。ちなみに、この手書きの本は後日アリスが手放し、オークションで1万5400ポンドで落札されたそうですが、有志たちがお金を出し合って買い戻し、大英博物館に寄贈したそうです。

ルイス・キャロルはきょうだいが11人で、子どものころからさまざまな遊びを考えきょうだいたちを楽しませました。大人になっても、こっけいでユーモアのある文章を書くのが得意で雑誌に彼の書いた文がのったりしていました。そのため「不思議の国のアリス」にも英語の慣用句・詩などをもとにした言葉遊び、ダジャレ、パロディなどがふんだんに盛り込まれているのです。イギリスの文化的背景を知っておくことが必要です。また日本語訳はかなり工夫されていますが、やはり英語で読まないと伝わらない面白さがあります。たとえば9章にでてくる「にせ海がめ」が、子供のころの校長先生は「海がめ」だけれども「陸がめ」と呼ばれていたと話します。海がめは英語ではturtle(タートル)といいますが、陸がめはtortoise(トータス)といいます。校長先生は「私たちを勉強を教えてくれた」ので「トートアス(taught us)」となるという言葉あそびなのです。わかったでしょうか。ぜひとも原文に挑戦してみてください。

では「言葉の梯子(はしご)」をもっと見てみましょう。ぜひ辞書を参考に考えてみてください。


① COLD(冷たい)→            → WARM(暖かい)

② LIVE(生きる、命、生活)→                → DEAD(死んだ)

③ 動物を人間に進化させる  APE(類人猿)→                → MAN(人)

※ 使う単語は必ず意味のあるもの、存在する単語でなければなりません。


解答例

① COLD → CORD → CARD → WARD → WARM

② LIVE → LINE → LIND → LEND → LEAD → DEAD

③ APE → APT → OPT → OAT → MAT → MAN

他のルートでつながる場合もあるのでいろいろ考えてみると面白いですよ。