大きな話


 【 ジェイ教育セミナー大津校 中森 】


いきなり国語の話ですみません。「大きい」と「大きな」の品詞は何でしょうか。


解答:

「大きい」は形容詞、「大きな」は連体詞です。

「大きな」を形容動詞と間違えないように! と習ったことを覚えている方もいらっしゃることと思います。

しかし、元をたどれば、これらはもちろん同じ言葉から派生したものです。さらに言えば、「多い」も語源は同じです。


古代日本語では、〈数量の多さ〉も〈サイズの大きさ〉も、どちらも「おほし」という形容詞で表していました。しかし、二つの意味を区別しやすいよう、自然に〈数量の多さ〉はそのまま形容詞「多し」を用い、〈サイズの大きさ〉は形容動詞「大きなり」を用いるようになっていったのです。

のちに、形容動詞「大きなり」が、現代語に近づく中で「大きい」というまた別の形容詞を生み出してしまったことで話はさらに複雑になるのですが…。


ちなみに現代でも、「大きなり」という形容動詞の活用は、「大いに」「大いなる」といった語に名残をとどめています。

関西に住む人なら、「おおきに」という言葉にも馴染みがあるかもしれませんね。



もう一つ、今度は世界史の話です。

私が高校生の時、世界史で「カール大帝(742~814年)」という人名が登場しました。現代のフランスやドイツ全域に及ぶ広い地域の支配を完成し、中世ヨーロッパ世界の基礎を築いた王です。

私が引っかかったのは、このカール大帝の別称の「Charlemagne(シャルルマーニュ)」です。高校生だった私は「シャルルマーニュ」という名前の響きの面白さに惹かれました。そして、「『シャルル』は『カール』のことだろうけれど、『マーニュ』って…?」などといろいろ考えたのですが、それ以上調べたりはしませんでした。

『マーニュ』の謎が解けたのは、ずっと後になってから。世界史に関する本を読んでいて「マグナ・カルタ」についての記述を読んでいた時でした。「大憲章」と訳され、中学校の教科書にも登場する「マグナ・カルタ」。「マグナ」は「大」という意味だったのです。

そこに気づけば、いろいろなことがつながってきます。調べると、「magna(マグナ)」はラテン語の「magni(大きい、の意)」に由来するらしく、これがフランス語の発音では「マーニュ」となるのです。

現代の英語でも、少し難しい単語ですが、「壮大な、偉大な」を表す「magnificent(マグニフィセント)」という語があり、もちろん「magni-」は「magna」と同じく「大きい」の意です。他にも、大きなワインのビンの種類から転じて、銃の名前にも付けられる「magnum(マグナム)」、地震の規模の大きさを表す「magnitude(マグニチュード)」なども同じ「magni」に由来しています。

ちょっとした疑問や引っ掛かりが、深掘りすればいろいろなところにつながって知識が体系化されていく。こういう体験は本当に楽しいものです。


ちなみに、「magnet(磁石)」はどうかと調べてみたところ、これは地名に由来するらしく、今回ご紹介した「magna」とは無関係なようでした。残念。