偏差値の話


                        【 ジェイ教育セミナー高校部

  河合塾マナビス はりま中央校 上野 】


受験生にとって偏差値は自分の学力を知る上で重要なデータの1つですが、『偏差値とは何か』と聞かれて答えられる人は意外と少ないように思います。そこで今日は偏差値のお話から。


まず、偏差値とは平均点が50、標準偏差が10となるように得点を換算した数値のことです。標準偏差とはデータのばらつきを表すひとつの指標であり、得点分布が正規分布(得点分布のグラフがきれいな釣鐘状になっている分布)と仮定した場合、偏差値が(50±標準偏差)の範囲内に母集団の約68%がその中に入ります。試験の場合ならば受験者総数の68%の受験生が偏差値40~60の中にいるわけです。見方を変えれば偏差値60の生徒は上位16%、偏差値40の生徒は下位16%に位置していることになります。さらに偏差値(50±標準偏差の2倍)となった場合は母集団の約95%がこの中に入ってきます。したがって偏差値70の生徒は上位2.5%以内に位置しているわけです。このように偏差値とは得点だけでは見えない母集団における位置を表してくれる貴重なデータですが、ここで注意しておかなければいけないことは、『偏差値は母集団によって変動する』ということです。時々『自分の偏差値は60だから、あと偏差値を2上げれば志望大学の偏差値62に届くので合格できる』といった内容の話をする受験生がいるのですが、これはかなり勘違いしているといえます。先に述べたように偏差値は『母集団における位置』を表すもので絶対評価ではありません。高3の春に実施される模試では高い偏差値が取れたのに、夏以降は偏差値が下がるケースはよくあるのですが、これは模試を受験する浪人生が増加することで母集団のレベルが上がるために起こる現象で、必ずしも受験生の学力が低下したことを表すわけではありません。また、毎回の模試で同じ順位が取れるはずもなく、出題内容によっては同じ科目でも解けたり解けなかったりすることもあります。したがって学力が変わっていなくても、複数の模試で同じ偏差値を取るということは偶然でない限りありえません。偏差値というのはあくまで目安として利用するものであることを知っておきましょう。


さて、5月3日(水)にはりま中央校の高3生を対象とした第1回全統共通テスト模試が大手前2号館にて実施されます。約1か月後に返ってくる成績表には、順位や偏差値の他に志望大学の合格可能性評価が載っています。(河合塾模試の合格可能性評価とは、受験した模試の結果をもとに志望大学の合格可能性をA~Eの5段階で評価してもので、A判定なら合格可能性80%以上であり、B、C、D、Eの順に合格可能性が低くなっていきます。ちなみにE判定では合格可能性20%以下という評価です。)この合格可能性評価だけを見て一喜一憂してそれで終わってしまう受験生が多くいますが、ここで受験生、いや今後受験生になる人すべてに一言。


『模試は受験する前よりも受験した後が大事なんだぞ。』


解答を見て分かるのは当たり前、それでは復習したことにならない。まず、正解できなかった問題の分析をしっかり行うこと。知識不足が原因ならば早急に知識を頭に入れるべし。理解できていなかった、あるいは理解したつもりだったが解けなかったという問題があれば基本の理解からやり直すべし。間違えた問題は必ず解き直し、今度同様の問題に出くわした際には『必ず解けるレベル』に仕上げるべし。初見の問題で手が出なかった問題があれば『問題のどの部分に着目すれば切り崩せるのか』までを考えるべし。模試判定Eでも合格した先輩はたくさんいる。E判定がでてもあきらめずに彼らに続くべし。