インディアンのジョーク


 【 ジェイ教育セミナー新飾磨校 富永 】


一年に一度のネイティヴのブログを書く日がやってきたようです。地球に生きる先住民と言われる人たちの部族には、必ず一族の中に、その「愚かさ」を人々の面前で、行動で示してみせる「聖なる道化師」がいるそうです。部族会議の場では必ず多数派の反対意見を唱え、様々な儀式の場においても、彼らだけは掟やタブーを破ることを許されています。これは、何か一つの物事にたくさんの人々が一気に集中する時はバランスが崩れて危険だから、そこには風穴が必要で、それは“笑い”だと考えられているそうです。


インディアンの人たちのジョークでは、日常のどうってことのないものが、ある瞬間にきわめて「神聖な気づき」に転化します。それは、世界をひっくり返す力をいまだに失っていないということからも、おおいに注目に値するのではないでしょうか。


『おまえの目には何が見える?』

今もティピ(移動式の簡易住宅)で暮らすインディアンのじいさまが、あるとき思いたって町にくり出した。町のちょっとした居酒屋で軽くひっかけてほろ酔い気分。すっかりいい気持になっていたところで、ひとりの若造に声をかけられた。

見ると上から下までニューエイジ・タイプの小僧っ子で、インディアンの伝統的な知恵のためならどこまでもついて行きますよといった風情がありあり。

まずその晩は虫の居所もよくて、相手もそれ程うざったい人間ではなかったから、じいさまはその若造を自分の野営地に招待した。

野営地に帰り着くと、ふたりは軽く腹ごしらえをしてからティピの中にもぐり込んで眠りについた。

夜も深々とふけるころ、いきなりじいさまがむっくりと寝床から起きあがって、暗闇の中で声をかけた。

「おまえさんの目に、なにが見えているか、言うてみい」

その声で若者も目を覚ました。そしてしばらく真剣に考えていたがやがてこうこたえた。

「何千もの星が見えます」

するとじいさまがまた聞いた。

「それはおまえさんにとってなにを意味している?」

若者はこたえた。

「そうですねえ、創造主のお作りになったこの宇宙では、きっと明日もまたよく晴れた美しい日になるということでしょうか」

すると老人がこたえた。

「無数の星たちはわしにこう伝えておる。誰かがおまえのティピを盗んで行きおったぞとな」



『大学で何を学んだの?』

男性用トイレの中で、二人の白人とインディアンの3人が用を足そうとしていた。

最初に白人が用をすませ、ズボンのチャックをあげてから流しのところで手を洗いはじめた。石鹸をたっぷりつけ、両腕の肘のあたりまでていねいに洗い流すと、その男は紙タオルを20枚程も使って両手両腕をきれいに拭いた。それから残りのふたりの方にむき直って、こう言った。

「ぼくはミシガン大学卒業でね、大学で清潔とはなにかを学んだのさ」

ふたりめの白人は指先をあわただしく流れる水ですすぐとペーパータオルを1枚だけ手に取り上げてそれで拭きながら

「ぼくはカリフォルニア大学卒業で、大学では環境にやさしい心がけについて勉強したからね」

と言った。

最後のインディアンの男が、小用を終えるとそのままドアをあけて外に出て一言。

「おいらは遠い昔にある長老から自分の手にひっかけないでやるやりかたを学んでるからな」


                出典『インディアンは笑う』(編:北山耕平)


おそろしくくだらないジョークですが、読んだ方に何かしらの笑いと気づきがあることを祈っています(笑)