学びの最初の一歩
【 ジェイ教育セミナー手柄駅東校 中川 】
数年前にノーベル賞を受賞された研究者の方が、インタビューでこんなことをおっしゃっていました。
「学生時代、教科書をしっかりと学び、その次に教科書の内容が本当に正しいのかと疑い、自分でその真偽を確かめることこそが学ぶことである。」
私自身、学生時代に教科書から多くのことを学びましたが、今、教える立場になって改めて教科書を見てみると、現在の教科書には載っていないこと、逆に新しく載っていることが多くあるなと感じます。
例えば、羽毛恐竜、動物の体温、呼吸方法、血液の色、昆虫の食性などといろいろありますが、今回はジェイの先生方の研修会(勉強会)でのことを少しお話します。
小6理科・中1理科で、脊椎動物について学習するのですが、
「ハトなどの鳥類の歩き方について、なぜ頭を前後に振って歩くのでしょうか?(全ての鳥類ではありませんが)」との問い掛けがあり、頭の中は「???」で、教科書には載っていないのではと思いました。
その答えが、以下になります。
●ハトなどが歩くとき、実は首を前後に振りながら歩くのではなく、頭をできるだけ長く同じ位置にキープさせるようにして歩いているのです。具体的には次のように歩きます。
① 首を伸ばした状態で頭を留める(頭は胴体の前に出る)
② 頭の位置をキープしたまま体を前に進める(左右の足を一歩ずつ前に出す)
このとき、頭の位置は胴体の上にくる(頭を後ろに振ったように見える)
③ 再び①②をくりかえしながら歩く
●ハトが頭の位置を同じ位置にキープさせるように歩く理由は周囲の様子(特に近いところ)をしっかり見るためといわれています。多くの鳥類の眼球は球体ではなく、扁平(楕円球)になっていて、ヒトのように上下左右に動かすことができない(流し目ができない)ので、頭の位置をキープすることでしっかり見つめているということです。
多くのハトは歩きながら地面に落ちている食べ物を探しており、しっかり見ないと見逃してしまうし、一方、立ち止まってじっくり見つめているとたくさん食べられないということで、食べ歩きをしているのです。
●多くの鳥類の眼球が球体ではない原因は、空を飛ぶための体の大改造にあります。
鳥類は飛ぶために骨を中空にして体を軽くし、胴体を箱のようにし、尾骨や顎骨をなくし、頭骨も小さくしました。一方、空を飛びながら空中の様子も地上の様子も見るために視覚は非常に発達しました。結局、頭骨の大きさの割に眼球が大きくなり、眼球を動かせなくなったといわれています。
なお、鳥類の視覚について、例えばイヌワシは上空高く飛びながら、地上のネズミの動きがわかるといわれています。
●なお、鳥類の歩き方は2種類あり、スズメなど小型の鳥は足をそろえて跳ねるように歩き、中・大型の鳥は左右の足を交互に前に出して歩きます。このうち、首を前後に動かしながら歩く習性がある鳥は、ハト以外にニワトリやキジなどがあり、いずれも歩きながら地上に落ちている食べ物を採る種だそうです。
●また、スズメやハトのような歩き方をする原因として、胴体が箱のようになっていて、哺乳類や爬虫類のように胴体をねじることができないということもあります。これも空を飛ぶための大改造の1つです。
今回の内容は教科書には載っていないことですが、教科書には発展内容として新しい科学知見が色々と載っています。興味を持ったことを深堀して色々調べてみることが、「学びの最初の一歩」となるのではないでしょうか。