伊勢物語と小倉百人一首


 【 ジェイ教育セミナー大津校 中森 】


先日、中学3年生の志望校別特訓で『伊勢物語』を扱いました。

私も授業にさきがけて『伊勢物語』を図書館で借りて読んでみましたが、これが非常によい。前に読んだのがいつだったか思い出せないくらい久しぶりの再読でしたが、昔の感動がよみがえっただけでなく、初読の際によくわからなかった章段や、あまり興味を持てなかった章段も、背景や面白さが以前よりよくわかるようになった気がして、楽しく読めました。

「昔男」と一般に呼ばれる主人公の男は、実在の貴族、在原業平をモデルにしていると言われます。以前読んで面白いと感じた前半は、今読んでも胸が熱くなります。青年期の主人公のはつらつとした活躍や情緒あふれる和歌の往還には、平安王朝文学の粋が詰まっています。

結局、図書館で借りるだけでは飽き足らず、講談社学術文庫の『伊勢物語』上下巻を買いそろえてしまいました。


古文とひとくちに言っても、長い歴史の中の、どの時代の文章なのかで、使われることばや文法は大きく変わります。

その中でも、平安時代の文学は中学、高校で学習する古文の花形です。文法や語彙が端正で、当時の生活や風習も知れば知るほど面白い。

『伊勢物語』は、小中学生ではさすがにとっつきにくいかもしれませんが、高校生のうちには是非触れてほしい名作です。


ところで、みなさんは小倉百人一首をどれくらいご存じでしょうか。

百首全部覚えた! という方から、ぎりぎり一首覚えているかどうか…、という方までいらっしゃるかと思います。

私の子供のころは、お正月といえば百人一首でかるた遊びでした。

世代を超えてみなさんのお宅にもかるたセットがあると嬉しいなあ、と思うのですが。


先ほど紹介した在原業平は、平安初期を代表する歌人で、小倉百人一首にも採用されています。

以下が業平の一首。アニメ化、映画化もされた漫画『ちはやふる』でご存知の方も多いかもしれませんね。


ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは


(はるか昔、伝説の神の時代ですら聞いたことがないよ、この竜田川の水を、真っ赤にくくり染めにするという話は。)

奈良を流れる竜田川の水、その一面を真っ赤な紅葉の葉が覆いつくす壮観な眺めを詠んだ一首です。


実は、百人一首には高校で学習する文法のエッセンスの多くが詰め込まれています。

また、声に出して読んだり聞いたりするうちに、五七五七七の和歌の韻律が自然と身に付きます。

奈良時代から鎌倉初期までの著名な歌人が勢ぞろいしているのも楽しいポイントですね。

そして何より、百人一首で行うかるた遊びは楽しいのです。かるたのセット一つでスタートできるのでお手軽でおすすめです。


冬の気配が強まってきました。みなさんも今のうちから百人一首の和歌を覚えてみて、お正月には家族、親戚や友人たちとかるたで遊んでみてはいかがでしょうか。