クリスマス映画『素晴らしき哉、人生!』
【 ジェイ教育セミナー花北本校 増田 】
クリスマス映画と聞いて、皆さんはどんな作品を思い浮かべるでしょうか。
クラシックとなった『三十四丁目の奇蹟』、子どもが大活躍するコメディ『ホーム・アローン』、クリスマス映画か否かが論争になるアクション『ダイ・ハード』、孤独なモンスターが人の心の優しさに触れるアニメーション『グリンチ』など、それぞれお気に入りの映画があることでしょう。
そんな中で今回は、定番中の定番『素晴らしき哉、人生!』を紹介します。
監督はフランク・キャプラ。1929年に起こった大恐慌の影響で暗い空気に包まれたアメリカにおいて、ユーモアたっぷりでヒューマニズム溢れる作品を沢山生み出して、アメリカを代表する映画監督になった人物です。『或る夜の出来事』『オペラハット』『スミス都へ行く』など、興行と評価の両方で大きな成功を収めています。
そんなキャプラが第二次世界大戦後に新しい映画会社を作り、1946年に自身の集大成的作品として満を持して発表したのが『素晴らしき哉、人生!』です。
主人公のジョージは正直者で、善人で、ユーモアがあって、頑固者で、すぐ調子に乗る。つまり美点も欠点もあるとても人間的なキャラクターとして描かれています。
人生の大事な場面でいつも困難が降りかかってきますが、必ず自分よりも他人を優先する行動を取ります。自分の夢は諦めて父の後を継いで小さな住宅金融会社を経営し、金儲けは二の次で思わず町の人を助けてしまうような人物です。思うような生き方はできなかったけれど人のせいにはしないし、誰かのために何かをしても恩着せがましくもない。そんなジョージは最愛の人と結婚できて、4人の子どもにも恵まれます。
ところが、クリスマスイブの朝に不運に見舞われて大金を失い、このままだと自分の会社が潰れてしまうという事態に陥ってしまいます。帰宅したジョージは思わず家族に八つ当たりしてしまい、絶望した彼は自殺して保険金を得ようと考えて、川に飛び込もうとするのです。
その時、彼を守るために守護天使が人間の姿をして現れます。自分なんていない方が良かったんだというジョージに、もし実際に彼がいなかったら町はどうなっていたのかを天使は見せます。その世界では町はめちゃくちゃに荒れ放題で人々の心もすさんでおり、ジョージの家も家族も存在しなくなっています。
もしもの世界をみたことで自分の人生の素晴らしさに気づいたジョージが、大喜びで家族の元に飛んで帰っていくとそこには……。最後はジョージの生き様が美しい形となって結実する大感動のハッピー・エンディングが待っているのです。
この映画で大切なことは、天使がしてくれたことが苦境を救うために過去を変えるのではなく、あなたの人生は間違っていないんですよと気づかせてくれるところだと私は思います。つまり、すべての人を肯定する人間讃歌の物語なのです。
ちなみに、実はこの作品は公開当時は興行的には大コケしています。そのため安く買い叩かれて、テレビで何度も何度も放送されるうちに、多くの人々に愛されるようになり、今やアメリカのクリスマスには欠かせない大定番の映画になったのです。それはもちろん作品自体が素晴らしいものであったからです。
どんなに大変な目に遭っても、その後どうなるかは分からない。それは主人公ジョージの人生であり、この『素晴らしき哉、人生!』という作品がたどった道のりでもあるのですね。
クリスマス映画は12月に見ることで、より特別な感慨をもたらすものです。この時期にぜひ一度ご覧ください。