読書感想文とAI
【 ジェイ教育セミナー本部 北野 】
「『走れメロス』は、太宰治によって書かれた短編小説で、友情、信頼、そして人間の誠実さをテーマにしています。この物語は、メロスという青年が主人公であり、彼の友人に対する強い信頼と、信念を貫く姿勢が描かれています。彼の行動とその背景にある感情は、現代の私たちにとっても非常に共感できるものであり、多くの教訓を含んでいます。
物語の冒頭で、メロスは妹の結婚式のために村へ向かう途中、独裁者ディオニスが無実の人々を次々と処刑していることを知り、激しい怒りを覚えます。彼はディオニスを討とうと決意しますが、その計画は露見し捕らえられてしまいます。処刑されることになったメロスは、妹の結婚式を見届けたいと願い、三日間の猶予をディオニスに求めます。ディオニスはその代わりに、親友のセリヌンティウスを人質として差し出すことを条件に、猶予を許可します。
この物語で特に印象的だったのは、メロスとセリヌンティウスの友情です。メロスはどんな困難があっても必ず戻ると誓い、セリヌンティウスもまた、メロスが戻ることを信じて疑いません。この信頼関係は、現代社会でも非常に重要なテーマであり、私たちにも深く考えさせられるものでした。
例えば、学校生活においても友人との信頼関係は重要です。私自身も、友人との約束を守ることの大切さを経験したことがあります。一度、クラスメートの一人が学校のプロジェクトで困っているときに、私はその手助けをすると約束しました。プロジェクトの期限が近づく中で自分の課題も山積みになり、手助けをすることが難しく感じる瞬間がありました。しかし、約束を守ることの大切さを心に刻み、夜遅くまで友人と一緒に取り組んだ結果、無事にプロジェクトを完成させることができました。友人の信頼を裏切らず、約束を果たすことの達成感は非常に大きかったです。…」
上記の感想文(?)は、私が書いたものではなく、「ChatGPT」に生成してもらったものです。読んでみると中学生が使わないような表現やどこか抽象的な表現が散見されています。
また、今年の課題図書である『ドアのむこうの国へのパスポート』についても感想文を生成してもらいましたが、実際に読んだ生徒に聞くと、主人公やストーリーが全く異なっていました。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
「ChatGPT」はある期間までのデータがアーカイブに保存されており、そのデータを参照して解答を作成しています。しかし、データは現在進行形で更新されているわけではないので、データに無いことを生成するときは、ハルシネーション(存在しない情報や事実を生成すること)を起こしてしまうようです。
しかし、AIの進歩は凄まじいものがあります。そのうち読みやすく、いかにも中学生が書いた文章が簡単に生成される日も近いのかもしれません。
結局のところ、感想文は自分の力で書くことが大切です。課題図書でも良いですが、登場人物に共感できる、共通点がある本を選ぶと書きやすいかと思います。例えば、野球をしているなら『バッテリー』や『エースナンバー
雲は湧き、光あふれて』など。注意点として、あらすじで文字数を稼がないことです。それは感想文ではありません。
読書感想文を書くことで、自分の考えを整理し、また著者の考えを理解しやすくなるので、色々と考えを深めることができます。そのため、読書感想文は「考える読書」とも言われます。単に国語の宿題としてではなく、そういった機会にしてもらえればと思います。
※少し話は変わりますが、ジェイの先輩から恐ろしい話を聞きました。
同級生が大学のレポート課題で「ChatGPT」を使用して、レポートを作成・提出したそうです。数日後、先生が全員の前で「バレバレ♡」とおっしゃられたそうで(プロですからね…)。その後どうなったかはご想像にお任せします。