読解力について(個人的ブックガイドも)
【 ジェイ教育セミナー龍野校 淡井 】
今年も残りわずかになりました。いかがお過ごしでしょうか。私の今年を振り返ってみると、「国内ミステリ」を読む楽しみができた一年でした。ただし、読めば読むほど、自分の愚かさが心にしみます。たとえば、悪意をむき出しにした登場人物に気を取られ、その陰にいる犯人に気が付かない、といった具合です。もちろん、作者は、きちんと、書くべきことは書いていたのに。要するに、思い違いをしていたわけです。ただ、言い訳になりますが、人間あるところ誤解あり、と言えるとも思います。
たとえば、今年1月2日の羽田空港地上衝突事故があります。一説によると、海保機のパイロットが、管制塔からの「(滑走路手前までの移動について、優先順位)ナンバーワン」という指示を、滑走路からの離陸優先順位ナンバーワンと誤解したとのことです。訓練を積んだプロでも、思い違いをする。だからこそ、我々は意識して、それに手を打つことが必要でしょう。
では、どうすればいいのか。塾生の皆さんは、まず、読解力を向上させるのも一つの方法だと思います。ただ、読解力といえば、「教えられるものではない。」、「量をこなせ。」といった言説があるようです。確かに、即効性があるものではないし、量も必要でしょう。それだけに、こういう手があるよ、という方法論が提示されるべきであり、塾生の皆さんも、使えるものは使ってください。そこで、私自身が使っているものをいくつか紹介します。
①動詞に線を引く。(なぜなら、英語は語順が大事な言語であり、動詞がそれを決めるからです。)
②前置詞+名詞にかっこをつける(原則、主語や述語といったものにならないので、英文の骨格が見えやすくなります。)
③段落ごとに一言メモをとる。(英語を読み、日本語で理解し、設問を解く。こういう複雑なことを行うのですから、メモをとり、脳に余裕をあげたいところです。)
①主張に線を引く(どこが主張かを判断すること自体が読解の目標でしょう。自信のない人は授業を受けてみては?)
②接続語に〇をつける(接続語を使うからには、筆者自身が、単純には話が進まない、と宣言しているはず。)
心情が分かるところに線をひく(結構、見落します。すると、解答時間を浪費することに。)
登場人物に〇をつける(同じ人が、役職名で呼ばれたり、通称で呼ばれたりします。)
もちろん、これが全てではありません。これだけ、情報があふれる世の中ですから、塾生の皆さんも他にいろいろご存じかもしれません。また、自分なりのやり方もあるはずです。ただ、なんでもよいという相対主義を私は採りません。やってはいけないこと、タブーがあります。それは、ただ漫然と何もせず、問題用紙をきれいなままにしておくことだと、私は考えます。それはなぜか。
かつて、アメリカのPBSという放送局で「ジム・レーラー ニュースアワー」という番組がありました。ポール・クルーグマン、グレゴリー・マンキュー、あるいはブレント・スコウクロフトといった俊英が集い、議論を行う番組でした。その際、必ずと言っていいほど全員が、メモを取りながら、議論をしていました。一流だから、まめに手を動かすのか、あるいは、手を動かすから、一流になったのか。とにかく、思考や読解に関わる活動をする際には、手を動かすようにしましょう。読むだけなら、そうする必要はないでしょう。でも、読み解くには、自分から行動することが必要です。そして、読解力を鍛えましょう。そうすれば、本が、いつでも、いつまでも、みなさんにとって、よい「先生」となります。私などが及びもつかない「先生」にどんどん出会ってください。
最後に読書について。この世には、面白い本が本当にたくさんあります。英語でも読むことができれば、ますます楽しい世界が広がります。(たとえば、Jack Ritchie=ジャック・リッチーという作家をご存じでしょうか。最高です!)あるいは、知らない間に自分に染み付いた偏見に気付かせてくれる本もあります。(『イスラームのとらえ方』東長靖著、『遅考術』植原亮著など)さらに、名作と呼ばれる小説では、こうありたいという理想的人物(たとえばドストエフスキー著『罪と罰』のソーニャ)、逆に、こうはなりたくないという反面教師的人物(たとえばチェーホフ著『谷間』のアクシーニア)に出会えます。そうして、自分の人格を高めてください。私も、本から学ぶことが多く、学ぶことが楽しいです。
秋田喜代美『読む心・書く心』北大路書房
夕木春央『方舟』
逸木裕『五つの季節に探偵は』、『彼女が探偵でなければ』
米澤穂信『可燃物』