新年のあいさつ(英単語の覚え方)


【 ジェイ教育セミナー本部 有働 】


明けましておめでとうございます。
1月4日、新年最初のブログを仰せつかりましたが、過去2年か3年続けて同じ役目だったので、新年の挨拶めいたことはもう書けません。
なので、新年とは全く関係のない話を。

職業柄、「先生、英単語が覚えられません」と生徒から言われることがよくあります。
ついこの間までは、そう言ってくる生徒には、「ノートに書いて覚えましょう」と答えてきたのですが、
最近は単に「書いて覚えろ」だけでは難しいのかな、と思うこともあります。

いきなり前置きから入って恐縮ですが、インターネット上には「単語は、その単語を見て意味が分かれば良いので、書いてスペルを覚える必要はない」という趣旨のサイトがたくさん見つかりますが、それらのサイトはたいてい大学受験生向けで、「書く必要のない難しい単語」について語っているので誤解しないでください。中学校の教科書に載っているような3000くらいの基本的な単語が書けるのは当たり前になったお兄ちゃん・お姉ちゃんたちに、例えばanthropology(人類学)とか、enormity(極悪さ)など、英作文でもめったに出ないような単語のスペルは覚えなくていいよ、と言っているサイトですから、このブログが対象とする小中学生の皆さんは、やはり「書けるようになる」必要があります。


はるか昔、私がまだ学校に通っていたころのこと。授業で読んでいた本の中に、日本語だと「心に刻む」という意味になる単語(rememberなんかよりもっと意味の強い語です)が出てきたことがありました。その単語の出てくる文を日本語にする分担に当たってしまったのですが、単語の意味が分からず、てんででたらめな訳をつけたところ、担当の先生にも周りの生徒たちにも失笑されてしまい、大恥をかきました。そのおかげで、あれから何十年も経った今でも、「心に刻む」がどの単語に相当するのか、私は即座に答えることができます。

これが意味するのは、「恥をかいたら覚えられる」ということではなくて、何らかのエピソードと単語を結びつけるのに成功すれば、記憶の定着はエピソードのない場合とは比べ物にならないくらい強くなるということだろうと思います。これは語学業界ではほぼ常識になっているような知識らしく、私の昔の友人は、人間の記憶のこの不思議な特徴を利用して、覚えられない単語を克服したそうです。どうしても覚えられない単語aを覚えるときには必ず左手にペンを持ってノートに書く、単語bを覚えるときには何だったか忘れましたが特定の銘柄のお菓子を食べながら覚える、というように、覚えられない単語を別の作業とリンクさせてみたわけです。彼の場合、「覚えられない」単語の数が少なかったのと、覚えようとしていた単語がこれまた非常に長くて複雑な単語だったから尋常のやり方では対応できなかった、という事情もあるでしょうが、皆さんのヒントになれば幸いです。

これもまた昔の話、ある出版社が単語を語呂合わせで覚えるための本を出していました。今もあるのだろうかと調べてみたところ、版を変えていまだに出版されているらしいのでびっくりしたのですが、その本では、例えばacquire(得る・獲得する)を覚えるのに、「悪はいや、と善を得る」という文言とともに昭和テイストしかしない野暮ったい男の子のイラストが載っていました。ほかにも、abondon(捨てる・放棄する)の覚え方は、「あ、晩だと勉強を放棄する」です。aで始まる単語の例しか思い出せないところからお察しいただけるように、私はこの本を購入したものの、あまりのばかばかしさに最初の数ページをぱらぱらめくっただけでそれこそ本をabondonしてしまったのですが、著者の真意は、語呂合わせで単語を覚えることよりも、哀愁漂うイラストやあまりにも強烈なダジャレを介して、単語にエピソードを持たせるところにあったのかも知れません。

書いても書いても単語が覚えられない、という人には、何か原因があるのだろうと思います。私が見聞きした範囲では、①音楽を聴きながら(スマホを触りながら)覚えている、②単語帳を見ているだけで、手を動かすことがない、③親に、先生に覚えろと言われたからいやいや作業のふりをしているだけで、心から「覚えよう」と思ってしているわけではない、④作業をしながら「発音」をしていない、⑤覚える作業をした後に「テスト」をしない、くらいが思い当たります。⑤については、その日にした作業の成果を確かめるためにも、必ずしてみてほしいものです。